第9章 鍛錬
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(大きく、大きく、もっと…もっと…もっ――…)
「…っ!…ケホッ!!……はぁっ…はっ………、」
突然乾いた咳が出て集中が切れてしまった。
悔しく思いながら桜がふと顔を上げると、満足そうに笑う杏寿郎と心配そうに見つめる千寿郎が立っていた。
千「桜さん!!大丈夫ですか…?」
「あれ!千寿郎くん帰ってきたんだね、おかえりなさい!」
そう言いながら桜は座り直した。
(…っ……痛い………?)
「せ、咳が出ただけだよ、大丈夫!ありがとー!」
千「……ぼ、僕が帰ってきたのは一時間ほど前ですよ。いくら声をかけても返事がないのでとても心配しました…。」
それを聞いてバッと杏寿郎の顔を見上げる。
杏「うむ!良い集中力だった!!」
その反応を見て桜は目を見開いた。
「ほ、本当なんですね…。千寿郎くん心配かけてごめんね!杏寿郎さん、ありがとうございます!!……っ!!!!」
(…ぅあっ!!!………や、やっぱり痛い……!!)
お辞儀した際に筋肉が激しく痛み、桜はピーンと尻尾を上げたまま固まった。
固まった桜を見て杏寿郎は限界が来たのを察し、ひょいと担ぎ上げた。
杏「桜の今日の鍛錬はここまでだ!」
杏寿郎はそう大きな声で宣言すると屋敷へ向かって行った。