第50章 すれ違い
無「どうしたの。」
「え……?」
無「最近、食事中に顔が変わらない。」
そう言われて初めて今自身が食事を取っていた事に気付いた。
「…………無一郎くん、記憶してるの…?」
桜は何と答えたら良いのか分からず はぐらかす様に質問で返す。
すると無一郎は再び少し首を傾けた。
無「今日あった事もよく思い出せない。」
「でも私といる時、たまに忘れてるように思えない事を言ってるよ。」
無「桜は…懐かしい感じがする。」
そのふわふわとした言葉に今度は桜が首を傾げた。
(雰囲気が誰かと似てるってことかな…。無一郎くんがいてくれて良かった。あんまり深く訊いてこないし…頼めば蝶屋敷にも連れて行ってくれる事も分かったし……。)
そう思うと桜は指輪を外している後ろめたさから なんだかんだと理由を付けて煉獄家へは帰っていない事を思い出し、目を伏せた。
(杏寿郎くんと和解してからきちんと二人で帰りたい。)
そう思うと桜は箸を持ち直し、蝶屋敷での出来事を思い出しながらご飯を口に頬張った。