第9章 鍛錬
杏「まずッ!!!!」
杏寿郎は右手で自分の胸をバシンッと叩いた。
杏「呼吸に大事なのは肺だ!当たり前だが!!」
「はいッ!!!!」
普段はほわほわとした雰囲気の桜だったが、部活が強豪の吹奏楽部だった為か意外と軍隊のような空気に強い。
そして流されやすく影響されやすい。
杏「そしてたくさんの酸素を取り込む!単純に聞こえるだろうが一朝一夕で出来るほど容易い量ではない!早速やるぞ!何事も基本を極める事が近道だ!!」
「はいっ!!!」
(肺活量といえば腹式呼吸!ユキの体で出来るのかな…。)
そう思いながら色んな所に力を入れたり体を動かしながら腹式呼吸できる体勢を探す。
「!!!」
(今できた!!)
使い慣れない箇所の筋肉に力を入れ続け、ゆっくりと腹式呼吸を繰り返す。
徐々に大きく、大きく―――…
自分の世界に入り込むように集中していったので、杏寿郎は黙って見ていた。
―――桜はスイッチの切り替えがたまに恐ろしく下手になる時があった。