第46章 新しい任務同行者
桜は無一郎を見送ると振り返って女性に頭を下げる。
「初めまして。一ノ瀬 桜と申します。お世話になります。」
幸「まあまあそんなご丁寧に…鬼狩り様に頭を下げさせては旦那に怒られてしまいます。私は笠野 幸と申します。何でも仰っしゃって下さいませ。」
「いえ……、私は鬼を狩ることが出来ません。隊士さんの治療を行う後援隊です。あまり気を遣わないでください。」
背中に "滅" の字が入った隊服を身に着けているにも関わらず桜がそう馬鹿正直に言うと 幸は少し呆けた後に頬を緩ませた。
幸「ですが先程 霞柱様が一ノ瀬様に接していらっしゃる様子を見てしまいました。あのお方は昨晩以外にも何度か我が家をお使いになられた事がありますが、柔らかい感情が顔に表れた様は初めて見ました。一ノ瀬様をそれだけ大事に思われていらっしゃるのでしょう。そのお方に私がどうして気安く接しられましょう。どうか気を遣わせて下さいませ。」
頑なな声色に桜は反論出来ず、眉尻を下げて促されるまま中へと入った。
―――
(幸さんの旦那さまは他界されてるのかな…。紹介はなかったけど幸さんを "おかあさま" って呼んだ若い女性は距離がある口調だったからきっと "お義母さま" って呼んだんだろうな…。ということは幸さんの息子さんもいるんだ。)
そう考えながら案内された部屋に入ると桜はすぐにユキの姿になり、耳を澄ませて少しでも街の音を拾おうとした。