第46章 新しい任務同行者
桜は人に教えられる程度の知識がある事を千寿郎にしか教えるつもりがなかった。
それ故に気まずそうな顔で妙な声を上げたのだ。
しかしすぐに諦めたような表情を浮かべると居間の入り口に座って二つ目の握り飯を両手で持ちもぐもぐと食べ始めた。
それを見た千寿郎はおずおずと口を開く。
千「この世界の…自然の色々な仕組みについてです。今は特に光について教えてもらってます。シャボン玉がなぜ虹色に見えるのかとか、夕日がなぜ茜色に見えるのかとか…。」
杏「風情を感じる学問だな。楽しそうだ。」
その言葉に桜は目を大きく開いて顔を上げる。
その視線の先では柔らかい裏表の無い笑顔を浮かべた杏寿郎が立ち上がり、嬉しそうにする千寿郎を撫でていた。
(やっぱり杏寿郎くんは稀有な人なんだな…槇寿郎さんだったら『女に学は必要ない』って嫌な顔しそう。)
そう思うと桜は小さく笑みを溢しながら残りの握り飯を食べたのだった。
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その後、二人は風呂に一緒に入った後寝室で互いの髪を拭きながら次の任務同行について話し始めた。