第45章 ※心配性と解決法
目を大きくさせて急いで手を退けさせると杏寿郎は驚いて呆けた様な顔をしたまま自身の目から少しだけ溢れて頬を伝う物に触れていた。
杏「……………これは、涙だろうか。血ではないな。」
桜は 表情同様に呆けた声色を聞きながら頬を優しく拭うと杏寿郎を抱き寄せる。
桜が何も言わないので杏寿郎の背を優しく撫でる音以外に何も聞こえなくなってしまった。
杏「…千寿郎には言わないでくれ。」
「言いません。」
そう言うと桜は杏寿郎に幸福感を与えようと温かい気持ちを持ちながら努めて優しく背を撫でる。
すると杏寿郎の体が分かり易く脱力したのを感じた。
(………かなり重いけど…このくらいの我慢は嬉しいくらいだ…。)
杏寿郎の下になっていた桜は『大型犬に甘えられたらこんな風に下敷きにされる事もあるのかな』と思いながら背を撫で続けた。
―――
杏「気恥ずかしくて顔を上げられそうにない。」
暫くしてから杏寿郎がそう呟いた。
その杏寿郎らしくない可愛らしい言葉に桜の頬は自然と緩む。
「では……………、そうだ。大事な話は終わりましたよね…?」
杏寿郎は何かを思い付いた様子の桜の頭を抱いたまま頷いた。