第44章 ※ずるい人
「…立道くんは物静かというより笑顔が可愛らしい人でした。惹かれた理由はそれだけで、それも六歳の頃です。それこそ杏寿郎さんの言ってた刷り込みに近く、家族の様に想う気持ちが強いです。」
そう言いながら杏寿郎の頬を愛おしそうに撫でると桜は目を瞑ってから額を合わせる。
「正直な所、杏寿郎さんの笑顔の方が私にとって好ましいですし、惹かれる点も多くあります。それから…立道くんと違ってどきどきします。」
それを証明するように杏寿郎の手を自身の胸の谷間へ導く。
そこから伝わる速い脈にほっとすると、いつもの調子を取り戻した杏寿郎はそのまま胸を揉んで優しく頂を刺激した。
真面目な話をしていた為に不意を突かれた桜は目を大きくした後ぎゅっと瞑り、杏寿郎にしがみついたまま体を震わせる。
震えが収まると桜は杏寿郎を見上げながら目に涙を溜めて不満そうな顔をした。
杏「すまない。嬉しく思ってほっとしたらつい手が出てしまった。今のは嫌だったろうか…?」
「い、嫌と言うより…杏寿郎さんのする事は心臓に悪いんです。ただでさえどきどきするのに…。以前、心臓が壊れそうって言ったじゃないですか…。これ以上困らせないでください。」
その心底困った声に杏寿郎の眉尻は再び下がる。
しかし、続いた言葉が杏寿郎の気持ちをひっくり返した。