第9章 鍛錬
それから、とにかくまだ謝りたい杏寿郎と、とにかく黙らせたい桜、二人を仲裁したいけど状況が分からずあわあわする千寿郎は しばらく堂々巡りをしていた。
杏「では!!俺を殴ってくれ!!!」
「………。」
桜はそれを聞くと言葉を失った。
(そ、そんな…人に乱暴な事したことないし……それに、杏寿郎さんは手加減をしたら多分許さな…、)
杏「もちろん手加減は無しだぞ!!!!!」
予想通りの強い意志に桜は遠い目をすると、この杏寿郎を止めるのは無理だと悟った。
「腐っても元神様の身体ですからね!覚悟してください!!腐ってないけど!」
そう言うと、桜は杏寿郎が元気よく返事をするより前にその横っ面に強烈なパンチを叩き込んだ。
―――パコーンッ
杏「む"ッ!!」
杏寿郎は微動だにしなかったが、不意打ちを食らったため変な声を出した。
一方、全く動かなかった杏寿郎に桜は感心して目を丸くする。
「……さすが炎柱様…。」
思わずそう呟くと杏寿郎は桜に眩いほどの笑顔を向けた。
杏「うむ!桜も良い拳だった!!よし!では俺はこれから鍛錬に励む!!」
桜が切り替えの速さに呆然としている間に、杏寿郎はスタスタと自室に向かっていく。
千「あ…!ぼ、僕も着替えてきます!!」
「え!あ……。」
(千寿郎くんも行っちゃった……杏寿郎さんはまるで嵐みたいだな……。)
そう思いながら自身の手を見つめる。
(私も任務に同行するなら少しでも動けるようになっておくべきだよね。一緒に運動しよう!)