第43章 弱いこころ
その様子を見て杏寿郎は目を細めると桜の頬を再び優しく撫でる。
杏「思い当たる節がある。君の目の前で母上を喪った父上の気持ちを理解出来ると自覚した時…一度、何かが外に溢れた。」
杏「今までにも溢れそうになった時はあった。だが見ない振りをしてきた。その結果 何かを欠いていったんだ。向き合っていれば君の言う "弱い所" というものを自覚し、正しい対応を出来る様になっていたのだろう。」
桜はそれを聞くと自身の頬にある杏寿郎の大きな手を両手で捕まえて大事そうに握り締めた。
(大きな手…。人を数え切れないほど守ってきた手。でも…こうやって包まれたことは何回あったんだろう……。)
視線を落としながら再び無意識に ぎゅっぎゅっと手を握ると杏寿郎は思わず笑みを溢す。
その気配に桜は不思議そうな表情を浮かべながら顔を上げた。
「………杏寿郎さん?」
杏「何も手遅れな訳ではないだろう。既に母上を亡くしてから溢したことが無かった物を君の前で溢したんだ。今度はそれに向き合い、正しい解消方法を学べば良いだけだ。心配するな。」
「………はい。」
(…相変わらず切り替えが速くて気持ちのいい思考……。)