第43章 弱いこころ
(心を失ってない事も感情が本物である事も分かる。愛する心がなければ千寿郎くんがあんなにいい子に育つわけがない。そうじゃなくて…、)
「私が心配しているのは…、その完璧な制御が……完璧すぎることです。」
自身の言葉のチョイスに桜が眉を顰めていると杏寿郎は首を傾げながら桜の頬に手のひらを当てた。
桜はその熱い手に自身の手を重ね、視線を合わせると再び口を開く。
「杏寿郎さんは弱いところを隠すのが上手です。…その生き方を格好いいと思う反面、不安に思う気持ちもあります。」
以前にも言われ、否定した言葉に杏寿郎は少しの間固まった。
杏「…………俺は弱い所を隠しているのか。」
それは疑問ではなく、新たな気付きに対する返しだった。
一方、あっさりと信じてくれたことに桜は目を大きくさせる。
(嘘はつかないって思ってくれてるのは知ってるけど、思い込みって考えてもおかしくないのに…。)
その思いが顔に出ていたのか、杏寿郎は微笑んで頬に当てていた熱い右手の親指で頬を すりっと撫でる。
杏「君はよく人の目を見て感情を当てる。二度も断言したのは言い切れる程に明確な色が俺の目に浮かんでいたのだろう。」
それを聞くと桜は杏寿郎の臆病な瞳を思い出して こくりと頷いた。