第43章 弱いこころ
杏「……と言っても、見せ方が分からないな。」
杏寿郎はそう困った様に言うと今度は桜の髪を梳きだす。
一方、桜は杏寿郎の言葉を聞いてやっと微笑みを取り戻した。
「無理に見せるものではないですよ。自覚した後 自分の中でそれをきちんと解消できるのならそれで良いとも思います。ですが、一人では抱えきれない程 辛くなったら…なったら………、」
言いながら桜は ふと湧いた疑問に首を傾げる。
「………そもそも辛く感じることってありますか…?」
杏「そうだな…俺の不甲斐無さから人を救えなかった時、大事な人が傷付けられた時等だろうか。」
それにピンとこなかった桜は『むむむ…。』と眉を寄せた。
「では…、辛くて…その上悲しいとか、助けてほしいって周りに求めるような気持ちになったことは……?」
杏「いや、悲しむことは不必要だと思っていたので避けてきた。精神面での助けは…考えた事が無いな。」
「確かに戦うときにまで引きずってしまえば危ないですし、いつも感じる必要はないですが…。でも、解消に必要なときは家族や仲の良い友達…、私の前で見せれるようになってくれたら嬉しいです。」
「その言い方だと…後ろ向きな感情自体に心当たりはあるのでしょう……?」
その言葉に杏寿郎は桜の髪を梳いていた手の動きをぴたりと止めて考える様に眉を寄せた。