第43章 弱いこころ
杏(……懐かしいな。こうして………、)
そう思い出しながら頭に感じる手の温もりに ふっと目元を緩ませると静かに瞼を閉じる。
杏「俺は変わった事をしたのだろうか。」
長い間互いに無言だった為、唐突にそう問われた桜はビクッと体を震わせた。
「……………はい。」
桜が迷う様に少し黙った後しっかりとした声でそう答えると杏寿郎はすんなりと納得した。
杏「そうか。」
「え…………?」
さっぱりとした声色に戸惑って胸の中を覗くと杏寿郎が体を起こす。
そして少し申し訳無さそうに眉尻を下げながら微笑んだ。
杏「君はあの時の鬼が幸せな夢を見せる鬼であったと確信しているのだな。そして俺が見た夢の方が妙だった。」
杏寿郎は一旦言葉を切ると今度は桜を抱き寄せて頭を優しく撫でた。