第43章 弱いこころ
杏「……桜。」
「……それなら…よかった、です。」
納得し切れていない心を隠せないままそう返すと、それを感じ取った杏寿郎が眉を寄せる。
杏「桜。ちゃんと目を、」
「すみません…!正直なところ、とっても混乱しています。その鬼と対峙した時 杏寿郎さんは槇寿郎さんと和解していましたし…何で……、」
杏「鬼が幸せな夢を見せるという証拠はあるのか。」
「竈門くんが鬼から、」
杏「鬼なら嘘をつけるだろう。俺は今本当に幸せだ。何故俺より鬼の言葉を信じるのか理解出来ない。」
その声色から杏寿郎が只々不可解に思っている事が分かった。
(…ほんとに不思議そう……。)
桜は幸せな夢を見る筈であった事を信じそうに無い杏寿郎を見つめた後 自身の胸に顔を埋めさせる様に杏寿郎の頭を優しく抱き寄せる。
(………………わたし…無力だな……。)
そう思いながら暫く柔らかい綺麗な色の髪を撫で続けた。
一方、杏寿郎は頭を引き寄せられた為 布団に手をついて体勢を保ちながら既視感に少し目を大きくさせていた。