第43章 弱いこころ
杏「どうした?」
(幸せな夢……?祝われないのが幸せな夢…?竈門くんから聞いた鬼との会話内容から察するに幸せな夢を見せるという情報は確かだと思う…。だとしたら……、)
「…………杏寿郎さん、今…幸せですか……?その時は…その時より………、」
(自分のこと麻痺してるって思ってたけど、私だったらきっと… "ちゃんと" 幸せな夢を見る。でも杏寿郎さんは違う。自分で全く気付けない程…、もっともっと心の底から自分の声を聞かないようにしてきたんだ…。)
杏「ああ、幸せだぞ。あの時よりもずっと。何故その様な事を訊く。」
不可解そうに首を傾げる杏寿郎に桜は複雑そうな顔を向ける。
「…あの鬼が見せるのは幸せな夢だからです。」
それを聞いた杏寿郎は少し体を揺らした後固まった。
(いや、幸せかどうかは分かってる…と思う。だとしたら杏寿郎さんは求める事がひどく不得意なのかな…あれ?そうでもないかな……。でも精神面で人に頼ることは知らないみたいだしやっぱり心配だな…。)
杏「待て。本当に幸せだぞ。」
深刻そうな顔の桜に気が付いた杏寿郎はすぐに声を掛けたが、考えていた桜の顔の色は晴れなかった。