第43章 弱いこころ
(杏寿郎さんの……幸せな夢………か。)
杏「桜?」
「わぅっ!!」
肩を跳ねさせて振り返ると杏寿郎が面白がる様に首を傾げて見下ろしていた。
杏「隙だらけだな。俺が相手だからだと信じたいが。」
「か、考え事をしてて……、」
少し気まずそうに言い淀む桜に杏寿郎は再び首を傾げる。
そして桜の前に座ると優しく触れてから指の背で言葉を促す様に頬を撫でた。
「…………列車の任務で…杏寿郎さんが見た夢はどんなのだったのかなって…。」
拍子抜けする程に小さな質問だと思ったのか、杏寿郎は微笑みながら答えた。
杏「ああ、夢を見せる鬼の事だな。俺は昔の夢を見た。」
(やっぱり昔の……お母さんがお元気で幸せだった…、)
杏「父上に柱になった事を報告した時だったな。何故あの時の夢を見せたのかは分からないが、現実だと思ってしまう程にそのままだった。だが皆同じ状況であった筈なのに気付かず出遅れるとは不甲斐ない。」
「………え………………?」
視線を落として聞いていた桜はゆっくりと顔を上げて目の前の微笑む男を見つめた。