第43章 弱いこころ
―――治療にあたっている隊士、煉獄 桜は特定の柱と行動している訳ではない。当てにして避けられる怪我を自ら作らないように。
その言葉から『特定ではないとはいえ、 "柱" に付いて行っている』事は分かられてしまったが、新しい情報を少し与えた事によって隊士の知りたいという欲は少し削がれ、懸念されていた噂の抑止と危機感を取り戻す事が出来たのだった。
―――
「あのお達し…本当にもうしのぶちゃんじゃなくなっちゃうのでしょうか……。」
杏「そうだろうな。」
桜は夜中に帰ってきた杏寿郎の上着を受け取りながら少し目を伏せた。
(しのぶちゃん、いつも凄い速さで鬼を倒すからあまり役に立てなかったな…。それより蝶屋敷での治療のほうが多かった。私 最終戦に前線で役に立てるのかな…。)
杏「大丈夫だ。」
その言葉に桜は背を向けて体を清めている杏寿郎を振り返る。
見える背中には傷が殆ど無い。
その広い背中と声から伝わる頼もしさに桜は こくんと頷いた。
「はい。」
その声がまだ不安を孕んでいた為か、杏寿郎は微笑みながら振り返って桜を手招きする。
しかし杏寿郎の上半身がまだ裸であった為 桜はすぐに首を横に振った。