第8章 覚悟と条件
千(桜さんが弟さんを思い出して泣いた後に急に忘れてしまったのも、きっと泣くのを見たくないユキさんがそうさせたからだ…)
千寿郎は初め、桜の心が忘れさせたのだと思った。
だが、忘れてた事を最後まで思い出し、また一瞬のうちに綺麗に忘れるなんて都合が良すぎて、他から力が働いたかのような違和感も覚えていたのだ。
千(あの時桜さんは結構長い間話してたし泣いてた…。記憶を消すのが簡単な事だったのならユキさんはもっと早く話を止めれたはず)
千(つまり記憶を消すには手がかかる…?そしてあの時は桜さんを猫にさせても守れないから猫にしなかった…?)
千(前の世界の記憶がないのも思い出したら懐かしんで泣くからだとすると…辻褄が合ってしまう……。)
そこまで考えてから千寿郎はハッとする。
千(それなのに、ユキさんの托した使命はかなり過酷……何でだろう?)
長い間、困ったように眉を寄せている千寿郎を
桜は心配して見ていた。
なんとなく声をかけられず、そわそわしながら待っていると、
千「考えがまとまった…と思います。」
と千寿郎は複雑そうな顔を上げた。
桜は何も言わず千寿郎の次の言葉を待った。