第8章 覚悟と条件
千(…守る……?…桜さんを危険から守る……。兄上の事以外にも不自然に感じた事がもう一つある。…あの不自然な記憶の失くし方…。)
千「あ、あの……桜さん…これまでに記憶がなくなった事はありますか…?」
「え?」
真剣な顔の千寿郎に少し驚く。
そして戸惑いながらも口を開いた。
「…あるよ。ユキの事ずっと忘れてたときがあった…忘れるはずないのに…。あとは前の世界についてかな。」
千「そのユキさんについて、忘れる直前に何か辛い事がありましたか…?」
「…うん。別れがあまりにも唐突で…熱を出して倒れながら長い間泣きじゃくってた…。その後急に忘れちゃったの……。」
桜はそう言って自身の胸を見る。
そして千寿郎を見ると決定的な言葉を発した。
「ユキは私が泣くのは耐えられないっていつも言ってたのに。」
千寿郎は口を薄く開けたまま固まってしまった。
(………たぶん…ユキさんだ…。)