第40章 ※ベッドの扱い方
「ふあっ……あっ、」
杏「君は本当にこの愛し方好きだな。表情が全く違う。」
ギッ ギッ…と軋むベッドに合わせて揺すられながら幸せそうな表情を浮かべる桜に杏寿郎は柔らかい声を掛けた。
その言葉を聞いて桜が少し申し訳なさそうに眉尻を下げると杏寿郎は優しく腰を動かしながら桜の頬に手を添える。
杏「その様な顔をする必要はない。俺も大変好きだぞ。心が満たされ、甘く蕩けそうになる。君の恍惚とした愛らしい表情を見れるのもこちらだけだ。」
それ等の言葉はどれも真実で、むしろ煽られさえしなければ優しい愛し方のみでも杏寿郎は困らなかった。
勿論 桜の余裕を失くし涙を流す顔を見たいという強い欲求はあったが、桜の体を壊す可能性と天秤に掛ければそれは忘れてしまえる程に小さかったのだ。
一方、性格に反して性行為に貪欲である桜の体は杏寿郎に教え込まれた愛し方の味をしっかりと覚えてしまっていた。
そしてその味はよっぽど焦らされていない限りねだらなくても与えられる物であった為、桜も杏寿郎もどれ程桜の体がそれを欲しているのかを正確に把握出来ていなかった。
その結果、杏寿郎は『激しい愛し方を自ら必要とする体になる "前" にやめる事が出来て幸いだった』と考えていたのだ。