第40章 ※ベッドの扱い方
杏「本当に俺は力加減が下手なのだな。気を付けなければいつか本当に君を壊してしまう。そう言えば父上も俺が君の体を壊すと…、」
そこまで杏寿郎が思い詰めると思っていなかった桜は眉尻を下げながら気を引く様に杏寿郎の頬に触れる。
「私が槇寿郎さんの前で言ったことは本当です。疲れはしますが壊れる程じゃありません。治療もしてません。必要なかったからです。」
その言葉に杏寿郎は下がっていた眉尻を更に下げて安心した様に息をついた。
杏「そうか…。だが、これ迄がそうだったからこれからも壊れないという保証はない。」
「は…、い。…………では、」
桜は杏寿郎の様子を見て『ここで決定的なことを言えばずっと優しく愛してもらえる』と直感した。
しかし、口を開いたまま言葉が出て来なくなり固まった。
『これからは激しく愛さないで欲しい。』という簡単な願いが言えないのだ。
そして、それが杏寿郎に気を遣った結果ではなく自身の欲から出た結果なのだと唐突に自覚すると真っ赤になって押し黙ってしまった。
(や、優しくしてもらうだけで良いに決まってるじゃない…!最初された時は確かに怖かったはずでしょう…?怖いことが好きになるなんて…そんな事ぜったいおかしい。わ、私……本当におかしくなっちゃったんだ…どうしよう…どうしよう………。)
杏「うむ、これからは必ず優しく愛そう。約束する。」
杏寿郎は眉尻を下げている桜の頭を安心させる様に優しく撫でた。
「…………はい。」
こうして桜が欲を自覚した直後、すれ違いができてしまったのだった。