第40章 ※ベッドの扱い方
暫くそうして宥める様に撫でた後 ピタッと動きを止めると杏寿郎は静かな声を出した。
杏「それなら…強く信じていてくれ。俺が必ず生き残ると。」
その言葉に驚いた様に桜が動こうとすると杏寿郎はそれを止めるように抱き締める。
杏「もう少しこうしていると良い。」
「…はい。」
相変わらず静かな声色で感情が読めなかった桜は眉尻を下げながらも杏寿郎の大きな心音を聞いて少し肩の力を抜いた。
(でも…杏寿郎さんは生き残っても絶対に一人になってしまう…。私が前の時代で生き延びる可能性があるのならそれで構わないって杏寿郎さんは言ってくれたけど…そう簡単に割り切れな、)
杏「気にするな。」
顔を見られていないのにも関わらず心を読まれると桜はビクッと体を揺らし、その読みが当たりであると自ら教えてしまった。
杏寿郎はそれに笑うと再び背中を撫でる。
杏「一人になる俺を心配してくれるのなら 今、思い出をくれると助かる。そろそろ俺が生きているという実感は湧いたか?君が言っていた "熱い体温と大きな心音" だぞ。」
それを聞いた桜は杏寿郎が自身の表情を隠す為ではなく、心音を聞かせようとして抱き締めていたのだと気が付いた。