第8章 〇〇しないと出れない部屋
「なぁんだ。キスだったらすぐできんね。」
「え?いやいやできませんよ?」
「何で?よくしてんじゃん。」
「そうだけど!」
そうだけどそうじゃない。そもそもキスもフロイドが勝手にしてくるだけで、私は一回もいいとは言ってない。というかキスっていうのは恋人同士がするもんであって、好意を持ってる相手にそうばかすかとするもんじゃない。
「じゃあいいじゃん、しよーよ、キス。」
「不意打ちで、じゃないキスとか無理ですよ!!」
「別にさぁ、口とは書いて無くね?」
「えっ……あ、そっか…」
ん?確かに言われてみれば口にキス、だなんて書いていない。私、なんで口限定だなんて思ったんだろう。
「ま、フツーに口にキスするけど。」
「あっ…ま、」
フロイドに迫られて少しずつ後ろに下がったが、トン、と後ろに壁を感じ逃げ場がなくなってしまった。イケメンがこんな近くに…私これからこの人にキスされるのか…ヤバい、変な汗出てきた。
「あは、小エビちゃん固まってる~」
「う、うるさいですよ!わざわざ壁に追い詰めなくてもいいじゃないですか!」
「だってこうしねぇと逃げるじゃん。」
「うっ…」
行動パターンを把握されていることが何か悔しい。じ、と見られてふい、と視線を逸らす。しかしグイ、と顔を掴まれて正面を向かされた。そして視線が交わった瞬間、ちゅ、と軽いキスがふってきた。最初はついばむようなキス、何も言わせないかのように連続で口をうばわれる。
「小エビちゃん、口開けて…」
「ん、ちょ…」
舌で口をこじ開けられ、そのまま侵入を許してしまう。中に入ってきた舌はとても大きく、しかし丁寧に確実に口内を犯されていく。押しのけたいのに上からの圧に勝てるわけもなく、そのままフロイドのされるがままになってしまう。結局解放されたのは、ドアがとっくに空いてからだった。