第8章 〇〇しないと出れない部屋
「ほらほら、ジャミル先輩。」
「ちょっと待て。」
とうとう頭を抱えて黙り込んでしまった。嘘でも私なんかに告白するのが嫌か。そうやって少し待った後、覚悟が決まったらしいジャミルは真っすぐに私の目を見てこう言った。
「俺と……付き合ってくれ。」
しーん…
「くそっ!!!!」
サラッと言った言葉ではどうやらドアも開かないらしい。ちゃんと心を込めて言わないといけないなんて…なんて難易度が高い。
「お前は…いつも馬鹿で危機感がなくて、でもほっとけない。そういうところが好きなんだよ、付き合ってくれないか…?」
しーーーーん
「んあああああああ!!!」
「心がこもってないですよ、先輩。」
頭を抱えて発狂している様子を見て、なんだかおもしろくなってきてしまった。いつも冷静で何でもできるジャミルが、こんなことで頭を抱えて参ってるだなんて面白すぎる。
「くそっ……俺が本気をだしてないこと分かってるのか!」
「え、これ本気じゃないんですか?」
「こんなありきたりな告白があるか。」
そんなことないと思うけど…ジャミルにとってはこんなの本気の告白じゃないんだな。結構真正面で言われたら赤くなってしまうレベルだと思ったんだけど。
「分かった、ここを出る為だ……本気を出してやる。」
「お、よろしくお願いします。」
「かな、俺はカリムの従者でそれは生涯変わらない役目だろう。俺はカリムの為に料理を作らないといけないし、カリムの為に命を懸けないといけない。でもな、そんな決められたクソみたいな人生の中でお前と出会った。俺にとっては唯一の光だった。分かるか?お前にとっては普通の先輩でも、俺にとってはもう特別な女なんだ。これからの従者人生には、お前に隣にいてほしい。好きだ………かな。」
ぶわっ、と顔が赤くなっていく。真剣に言ってんのか、それともこれも嘘なのか………言い終わったジャミルは私を見てニヤッと笑う。後ろで静かにドアが開く音が聞こえた。