第8章 〇〇しないと出れない部屋
~ジェイドver~
「かなさん、起きてください。」
「んん……?うわ、びっくりした、」
誰かに名前を呼ばれて重たい瞼を開けると、そこにはニコニコと笑ってるジェイドが。いや、寝起きでそのお顔はビックリするから、心臓に悪いから。
「おはようございます。」
「お、おはようございます…?え?なんでジェイド先輩が…?」
「見知らぬ部屋に閉じ込められたようです。唯一の出口も強力な魔法で出れなくなっていて…困りましたね。」
全然困ってなさそうに見えるのはたぶん私だけじゃないよね?でも、魔法で閉じ込められてるっていったい…ずっとこのままじゃないよね?出れなくて餓死、とかさすがにないよね?
「そういえば、先程ドア付近を観察していた時にこんな紙を拾いました。何か分かりますか?」
「ん?」
渡されたのは本当にただの紙だった。二つ折りにされていた紙を開き、そのシンプルな内容に驚く。そこには『お題:キス』と書かれていたのだ。お題ということはここはまさかあの有名な○○しないと出れない部屋?
「どうかしましたか?顔が真っ青ですよ?」
「あ、あのこれ…」
かいつまんで説明をする。キスしないと出れないだなんて…まだ付き合ってもないのにそういうことをするのは…って何付き合ってもいい、みたいなこと言ってんだ私は!!
「………つまり、かなさんとキスをすれば良いのですね。」
「そうなんですけど、それが問題で!!」
「いえ、でもこの紙にはどこにキスするか、なんて書いてありません。」
「……あ、確かに。」
私、キスと聞いただけで何で口を思い浮かべちゃったんだろう。冷静に口以外でもできるとたしなめてくるジェイドに恥ずかしさが募る。
「さて、どこに致しましょうか…?首?鎖骨?」
「何でそのチョイスなの……」
「じゃあかなさんはどこにされたいですか?」
「え……じゃあ無難におでことか?」
「ふふ……かなさんらしいですね。では失礼します。」
変なところにキスされるくらいなら無難なところを選んでしまう私の性格。クスクス、と笑って身をかがめて触覚を耳にかける。その仕草が妙に色っぽく見えて赤くなる。その顔を見られなくて下を向いた瞬間、額に温かさを感じた。