第8章 〇〇しないと出れない部屋
「っ……な、何だ?」
「いや…なんて書いてあったの?お題は」
「え…っと、」
まごまごとしてて何も言わないデュースを見かねて、持っている紙を覗く。お題はこうだ、『ベットの上で抱き合う』。これはあれだよな?普通に抱きしめあうってことでいいんだよね?疑問なのが、何故ハグするだけだというのにベットの上で、という指定があるということだよね。
「まぁハグくらいならすぐできるでしょ?ちょっと緊張するけど…」
「こ、言葉と行動を一致させてくれ…」
よいしょ、と躊躇なくベットに乗ったのが悪かったのだろうか。でもお題がベットって書いてあるし、何より相手がデュースだっていうのも大きいだろう。むしろデュースだからこそ言いという謎理論が確立している。
「ハグぐらいいいじゃ~ん。できるでしょ?」
「できるわけないだろ!!!」
「何で?」
「恥ずかしい、からだ……」
ベットの近くまでは来ているけど、あと一歩のところで顔を真っ赤にさせて踏み出せないデュース。初心だ……初心すぎる…男子高校生やろ?でもデュースは素直ないい子だから、一押しすれば勇気を出してくれるはず。
「私も恥ずかしいよ?でもしてほしいな~…でも恥ずかしいんなら仕方ないか~」
「……なつき…ダメだ、そんな言い方をしたら…」
「デュースにしてほしいから言ってるんだよ?」
我ながらあざといと思う。しかしこの技は、エースが先輩に対して媚を売ってる様子を見て学んだんだもの。叱るんならエースを叱ってよね。ぎこちないがギシ、という音をたててベットに乗ってきた。しかしまだ距離は遠く、ハグまではまだいかない。
「んね~…そもそも私から誘うのも違うんじゃないの??普通男子からでしょ。」
「む……しょうがないだろ、慣れてないんだから。」
少し頬を膨らませて抗議をするデュースが可愛い。そしてたっぷり時間を使って息を整えると、恥ずかしそうに腕を広げてきた。
「……なつき…来い。」
「んっ…?」
確かに誘ってほしいとは言ったけど、こういう風に来るとは思っていなかったため少しだけ驚く。デュースは真剣な顔で真っすぐこっちを見ていた。私は広げられた腕の中にのそのそと入っていき、デュースをギュッと抱きしめる。