第8章 〇〇しないと出れない部屋
「私だってエースのこと好きなんだから……」
「…本当にさ、そういうこと言うの良くねぇと思うんだけど?オレじゃなくてデュースに言えよ。」
「何でそこでデュースがでてくるのよ。」
何かと比較対象にデュースが出てくるんだから。私は元の世界では、好きなものに好きと言えない、ちょうどここにいるエースくんみたいな素直じゃない人間だった。だからこそ、ここでは自分の気持ちに正直になるんだって決めてる。やっぱり好きな人はどうあがいても好きなんだもん。
「………まあデュースも?そりゃ好きだけど。でもエースもさ、困ってたら真っ先に助けに来てくれるし、頼もしいし、カッコいいって思ってるよ。」
「あーもー分かったから!!もういいもういい!!ほら、早くここから出るぞ!!」
ちょっと褒めただけで真っ赤になっちゃって。この空気が耐えられなくなっちゃったんだろうなぁ…なんて思いながら、ほら、と胸を差し出す。
「だーーから!!一応女なんだから、もっと恥じらいを持てって!!」
「早く出たいんでしょ!?もじもじしてないで早く触らんかい!!」
「だーっ、もう!!わぁったよ、少し黙ってろ!!」
少しの沈黙が流れる。何も話さないほうが緊張しない?これ…。大きく呼吸をして、そろそろと伸びてくるジッと手を見る。大きい手だな…これじゃあ私の小さい胸なんか収まっちゃいそう…なんて思ったら急に恥ずかしくなってきた。
「…おい、そんなに手を見んなよ。触りにくいだろ…」
「いや…だって、この手に触られるって思ったら……」
「だからさお前……はぁ~…目でも瞑ってろ。」
「わ、分かった。」
今日はやけにため息つかれるな…大人しく目をつぶってることにする。エースの気配を感じて少し体が強張る。ゴク、という音が聞こえてすぐ、さわ…と胸に手が当たって少し体が跳ねる。これ、目をつぶってた方が何か変な感じしない?
ガチャ…
「……エース?」
「…まだ目ぇ開けんなよ。」
「…?うん。」
ドアが開く音が聞こえたのに、まだ目を開けちゃダメだってどういうことや。胸からそっと手が離れ、エースの気配が消える…と同時に、ちゅ、と額に何かが当たった。びっくりして目を開ける。