第7章 過去
「あのね」
少し歩いたところで私はダイゴさんに話しかけた。
「どうしたんだい?」
「昔話をしていい?」
「いいよ」
ダイゴさんの優しい声に私は安心して語り始めた。
「これは私がまだ四歳くらいの頃の話なんだけど」
『その頃は今以上に泣き虫ですぐ泣いていた。嫌なことでもなにかびっくりしただけでも泣いていた。それを優しく慰めてくれていたのは兄さまで、弟もよくわかんなくても「側にいるよ」って言ってくれて嬉しかったの。
でもね、母さまは厳しい人でね。厳しいっていうか、強い人。
母さまは常に自信があって強くて美人で私と正反対で。そんな母さまは羨ましかったし怖かった。
私は周りから唯一母親に似ていないって馬鹿にされてて、顔も才能も駄目なやつだって言われ続けてた。ダイゴさんが私が自分を認められないって言うのはたぶんここからきてるんだと思う。
そんな生活してて私は劣等感の塊で、しかもびっくりすると勝手に涙がでる泣きやすい体質でもっと馬鹿にされてて、そして泣いてると母さまは「もっと強くなりなさい!」って言ってくるの。
今でこそ母さまは私を考えての叱咤激励なんだってわかるけどそのときはただ怒られて怖かった。
それでね、一回だけ大喧嘩したの。
「母さまはいっつもおこっててトオルのこと見てくれない! 母さまだってじぶんににてないトオルのことなんてどうでもいいんだ! こんなかおに生まれたくなかった!」
そう言ったら母さま本気で怒っちゃってパァンッて強くビンタされてね。さっきダイゴさんにビンタされたときにこのこと思い出したの。
母さまは私をビンタしたあとすごい怖い顔で、
「私の愛する人のことをそれ以上馬鹿にするのは許さないわ!」
って。私それを聞いて「母さまは父さまだけが好きなんだ」って勘違いしてね。あとで聞いたら母さまの『愛する人』の中には私も入ってたみたい。
それで勘違いした私はそこにいるのがつらくなって家出をしたの。
その当時、去年母さまに誕生日プレゼントでもらったピッピ人形がお気に入りでずっと抱き抱えててね、家出したときもずっと持ってたの。それで近くの公園でピッピ人形に顔を埋めて泣いていたら知らないおじさんに声をかけられたの』
「え、待ってそれって!」
「大丈夫だって」