第6章 逃避
「帰って! もう聞きたくない! チャンピオンに勝ったハルカが勝ったことのない私が強い? ふざけないで! 私は弱いからまだミクリさんに勝てないの! 勝ったことのあるハルカが馬鹿言わないで!」
「ま、待って、それは運が良かったからで、」
「運が良かった? それだけで勝てる相手じゃないでしょ? それにハルカは強いから『あの事件』に関われたんだ! 私は関われなかったのに!」
「トオル? あの事件って……。それに、」
「聞きたくない!!」
私は何か言い掛けたハルカの手を振り払って怒鳴りつけた。ハルカは振り払われたその勢いで後ろに後退り椅子に足を引っかけてガタンッと大きな音を立てて転んでしまった。
私はそれを見てサッと顔が青くなったのを自覚した。でももう遅い。
やり過ぎたことを謝ろうと声をかける手前で勢いよく扉が開いた。
「さっきの音はなんだい?」
急いで入ってきたのはダイゴさん。その後ろにミクリさんの姿もある。
ダイゴさんは尻餅をついているハルカを見て眉間にしわを寄せる。
「なにがあったのかな?」
まるで容疑者の尋問だ。いや、ハルカが転んだことに関しては私が犯人なのだけれど。
ダイゴさんは私に鋭い視線を向けながらハルカの側によって声をかける。
「大丈夫かい?」
「大丈夫で、いたっ」
「足をひねったのかもしれないね。椅子に座って」
倒れていた椅子を立て直してハルカを座らせる。そうしてまた私を睨むのだ。
「それで、説明してくれるかな?」
「……私が苛立って突き飛ばした。それだけ」
「それだけって君ねえ!」
「ち、違うんです、私がしつこくてトオルは少し振り払っただけで」
「でもそれが原因でハルカちゃんは転んだんだろう?」
「それは、そうですけど……」
「それで? なんでそんなことになったんだい?」
「帰ってほしかったから。ここにいるのが迷惑なの」
「せっかくお見舞いに来たのにその言い方は!」
「うるさい!」