第19章 焰
「賢いやり方だ。他には何を話したのかな?」
「青い彼岸花について」
宇那手は、出立の前に、鴉から鬼舞辻が何を探し求めているのか聞き出した。
「現在の人間の力では、青い彼岸花を作り出すことは不可能に近い、と。国外での、青い薔薇の研究について伝えました。もし、自然に咲いているのであれば、黒に近いのでは無いか、と。それよりも、千年前の技術を考慮するに、突然変異した白い彼岸花に、青い薬を吸わせ、彼岸花の毒を無効化した物を飲まされた可能性を伝えました。この先は、お館様と二人でお話したいのですが」
「分かった。二人とも席を外す様に。⋯⋯ 行冥。火憐の待遇について、まだ答えを聞いていなかったが、どう思う?」
「この様な覚悟を持った者に対して、反対する理由が御座いません⋯⋯」
「ありがとう」
産屋敷は短く答え、二人の柱が部屋を出て行くのを待った。
数秒の沈黙の後、彼は両手を伸ばした。
「火憐、傍に来ておくれ」
「はい」
宇那手がそっと身体を前に出すと、産屋敷は子供をあやす様に抱きしめた。
「私のために、君を死なせてしまうところだった。良くやった。しかし⋯⋯私と共に生き急ぐ必要は無い。私には、死を共にする存在がいる。だが、火憐は違う。誰もが、君の生を願っている」
「私は、師範の言葉に従っているだけです」
宇那手は、友人として、産屋敷の背中に腕を回した。
「惨めに蹲っていても、状況は変わりません。⋯⋯鬼舞辻と取引をしました。禰豆子が日光を克服した時に、それを伝える代わり、襲撃する場所を教えていただきます。私の命運は、鬼舞辻が握っています。私の命に価値があると思っている間は、私を殺しません。ギリギリまで、鬼舞辻の信頼を失わない事が、鍵になります。お館様が、全ての準備を終えた頃合いを見計って、私は彼にこの屋敷の場所を流します」