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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第105章 無視


「本当に人の話を聞かない女だな」

 義一は、宇那手の頭を摩った。

「好きだと言っているだろう」

 それから、義一は宇那手を宥めるのに一時間掛かった。しかし、不思議と億劫だとは思わなかった。

(まあ、三日三晩付け回された時の事を考えれば⋯⋯)

「ごめんね」

 宇那手は、涙を拭って座り直した。

「貴方と同い年なのに。こんな、子供みたいに甘えて⋯⋯」

「お前が子供なのも、孤独なのも知っていた。だから、クマを贈っていたんだが」

「⋯⋯え? どういうこと?」

「ペットやぬいぐるみになら、本音を吐き出せると思って。まあ、累の喘息もあるから、流石にペットは贈れなかったが。⋯⋯確信を持てなかったんだ。お前の演技を見て、十中八九それなりに記憶があるんだろうとは察していたが、切り出す勇気が無かった。下手をすれば、俺は狂人扱いだ」

「じゃあ、もうぬいぐるみは良いよ。これからは、なんでも、義一君に相談するから」

 宇那手は、ようやくニコリと笑った。

 その後、二人は取り止めの無い話をした。学校で流行っているゲームや、制服の着崩し等、ありきたりで、平和な話を。

 十時ピッタリに、電話をするまでもなく、月彦が迎えに来た。

 宇那手は、少し腫れた目で、けれど曇りの無い笑顔を向けた。

「いっぱいお話を聞いて貰ったよ」

「そうですか」

 月彦は納得した様子で宇那手の手を引いた。宇那手は、少し考えて、何時ぶりかも分からない我儘を口にした。

「ねえ、お父さん。ハムスター飼っても良い? ハムスターなら、床材を紙に出来るし、餌もペレットで飛び散らないから、アレルギーも起きにくいと思うんだ。ねえ、お願い! 部屋からは絶対出さないから!!」

「構いませんよ」

 月彦は、即答した。その表情は、宇那手に対する信頼に満ちていた。
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