第18章 鬼舞辻無惨
「お前は、随分と色々な事を知り得ているが、何者だ? 柱の席は全て埋まっている。しかし、産屋敷に意見をする権限を持っている」
「馬鹿げた決まりのせいで、私は力を持ちながら、柱になれないのですよ。柱の席は満席ですので、誰か殺されるまでは、一般隊士扱いです」
宇那手は、鬼舞辻の同調を得られる様に、敢えて鬼殺隊を悪し様に言った。
「ですが、階級は最上級、待遇も柱と同等。産屋敷様の友人です。⋯⋯まだ、使い道があると思いませんか?」
「更に取引をしたいと?」
「禰豆子が日光を克服し次第、貴方にそれをお伝えします。その代わりに、何処で襲撃するかを教えてください」
「良いだろう」
鬼舞辻は、もう迷いを見せなかった。
「だが、私が嘘を吐く可能性は考えていないのか?」
「信頼しております。貴方は嘘を嫌います。⋯⋯そして、私も人の中では、嘘を見抜く事に長けておりますので。では、また時が来ましたら、月彦様宛に手紙を出します」
宇那手は、鬼舞辻に背中を見せず、後退して人混みに姿を消した。
「っ?!」
鬼舞辻は、前のめりになって息を呑んだ。宇那手の気配が突然消えたのだ。恐らく、通り掛かった他人の呼吸、心拍数、感情を完全に真似たのだ。追跡は不可能だった。
鬼舞辻は思わず笑ってしまった。
千年の内、直接自分を探し出し、取引を持ち掛けて来た鬼殺隊員は、彼女唯一人だった。しかも、痣者。
「見事だ」
宇那手が、自身の元に降る気が無い事は察した。それでも、もう暫く泳がせる価値があると判断した。