第17章 七年
彼の問いに、宇那手は首を横に振った。その点だけは譲らなかった。同じ苦しみを抱く、優しい人を守りたかったのだ。
「何故独りで苦しむ!」
肩を揺さぶる冨岡を、宇那手は優しい瞳で見つめ返した。
「独りではありません。お館様が一緒です」
「一緒に死ぬ気か!! 何故そんな──」
「それが私の役割だからです」
宇那手はニコリと笑い、冨岡の頭を胸に抱え込んだ。
「勘違いしないでいただきたいのですが、お館様は親しい友人です。貴方は家族だった」
「今もだ。時間が無いのなら、早く俺を受け入れろ」
冨岡は宇那手を押し倒し、彼女の首に現れた痣を、手でなぞった。
「こんな物一つで寿命が縮む? それなら何故、鬼舞辻と直接戦った始まりの呼吸の剣士は長生きした?」
「天才だった、としか言い様が無いですね。勿論、私は可能性を信じています。でも、貴方には、より現実的な話を突き付けて置かないと、後で苦しみますから」
宇那手は、疲れた様子で瞬きした。自身の治療の為に、随分力を使ってしまったのだ。
「⋯⋯俺はもう、お前を尊重しない」
冨岡は、今にも眠ってしまいそうな彼女に宣言した。
「俺を拒む力を持たない弱者の意向など、考慮しない。回復したら、すぐに抱く。戦う力を奪う!」
「私の事は、好きにして構いません」
宇那手は、冨岡の首に腕を回した。
「貴方の好きな様にしてください。ですが、私は戦います。⋯⋯お伝えしていなかったのですが、私の身体には変化が起きています。恐らく、戦えない状態にするのは、無理です。私が戦いから離れ、極度の重圧から解放されない限り、子を産む事は出来ません。だから、貴方の行為は、何の意味も無い⋯⋯。生産性が無い」