第103章 繋がる
私はずっしりと重い紙の束を手に取った。その一番上に、書きかけの記録があった。
──柱合会議に呼ばれた少女は、異様な気を放っていた。
私は夜通し、喰らい付く様に、それを読んだ。途中で涙が堪えられなくなった。
母がどれだけ理不尽な目に遭わされ、鬼を討ったのか。
どれだけの思いの果てに、父と結ばれたのか。
父が、母に執着していた理由も、理解出来た。母が、私を産むために命を削っていた事も知った。
時折、父が向けて来る冷たい視線の理由は、それだったのだ。
しかし、母は命を消費する事を承知の上で私を産んだのだ。私は望まれて産まれて来たのだ。父がどれほど否定しようとも、母の想いは変わらない。
生きて行こうと思った。例え、どんな困難が訪れようとも。生きて、生きて、生き抜いて、母が命を懸けて遺した真実を伝えて行こうと決意した。
地震、津波、噴火、戦争、飢餓。人が生み出した、人という名の鬼と、毅然と戦った。
徴兵された五人の息子達に、私は包み隠さず本音を伝えた。
生きることを、諦めない様に、と。母と同じ様に正しく生き、暗闇の底でも、希望を信じて足掻き続けた。