第16章 炎と水の演舞
「⋯⋯本来なら、炎の型の修正を頼みたかったのだが、迷惑を掛けた」
冨岡は継子を抱き上げ、彼にしては珍しく頭を下げた。煉獄は、炎の様な闘志を持った少女を見下ろし、何度も頷いた。
「特に問題は無い。威力も高く、俺に出来ることは無いだろう! 強いと言えばこの娘は奥義も使いこなせるはずだ!」
「下限の鬼を葬る際に、実際使っていた」
「何?!」
「見て覚えたと言っている。⋯⋯正直な所、俺たちに出来ることは、あまり無い様に思える。始まりの剣士以来の傑物だ」
冨岡が改めて宇那手の顔を見ると、彼女は鼻血を流していた。
「冨岡、背中を叩け! 肺を痛めていると言ったな? 窒息するぞ!」
煉獄の指摘通り、宇那手の俯かせて背中を叩くと、彼女はまた血を吐いた。
止むを得ず、冨岡は、彼女を肩に担いで、地面の方を向かせた。
「今日の礼については、追って連絡する」
彼は返事も聞かずに走り出していた。宇那手は、薄ら目を開けた。
「⋯⋯師範。荷物になってしまい、申し訳ございません」
「無理をするなと言ったはずだ! 何故最初の制止を聞かなかった?!」
「⋯⋯申し訳ございません。捨てていただいて、構いません」
「馬鹿者!」
冨岡は、止むを得ず彼女の首に手刀を叩き込み、気絶させた。それでも、彼女は全集中の呼吸を止めていなかった。しかし、呼吸の性質が変わっている事に気が付いた。
彼女は、浅く早い呼吸を繰り返す事により、血の巡りを良くしている。通常出血をした場合には、呼吸を深く緩やかにし、血の巡りを止めるのだが、彼女は代謝を上げ、呼吸を治療に利用していた。
「っ⋯⋯」
冨岡は、彼女の額に触れて冷や汗をかいた。考えられないほど体温が高くなっている。加えて、首の痣が気になった。何か意味のある物に思えてならなかった。鬼の紋に良く似ていた。