第103章 繋がる
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※火憐の娘視点に切り替わります。
母は、お日様の様な人だった。口数の少ない父の分も、よく話し、私を愛してくれた。
物心ついた頃の誕生日に、毎年鬼や、鬼殺隊について話してくれた。その内容は年々複雑になって行ったが、比例して、母の話が真実であると確信を持てる様になって行った。
うちの家は、少し変わっていた。家事をこなすのは、父。仕事をするのは母。
母は、貿易会社の帳簿を作成する傍、様々な客人を家に招き、その話を聞き取っては、タイプライターで記録していた。時には鞄一つで出掛けて、数日戻らない事もあった。客人は、元鬼狩りを自称する者と、化け物に家族や恋人を殺された被害者だった。
私が七歳の誕生日を迎えた夜、仲睦まじい母と父が、珍しく口論をしていた。
父は、母が休息を取る事を望んでいた。
私も、母と一緒にいたかった。母が無機質な機械と向き合っていた時、一度だけ怒りをぶつけてしまった事がある、
もっと、私と遊んで欲しい、と。だって、私は子供だから。
しかし、母は苦しげな表情で、「ごめんなさい」と一言返した。
その年の冬から、母は急激に衰えて行った。
呼吸というものを使い、身体を酷使した副作用だと、以前から警告されていたので、私は淡々と看病をした。
母は、寝たきりになる直前まで、タイプライターを離さなかった。
そして、私が十歳の誕生日を迎えた後、母は静かに息を引き取った。
昔からお世話になっていた、産屋敷家の人や、母の弟子だという竈門家の人々、蝶屋敷のお医者さん⋯⋯それから、絶縁状態にあった、母の叔母等沢山の人が弔問に訪れた。