第103章 繋がる
「⋯⋯火憐?」
冨岡は一気に血の気を失い、呼び掛けた。宇那手は、返事をしなかった。出来る様子でも無かった。
「火憐!! どうした?!」
「⋯⋯お静かに」
宇那手は、細い声で制し、輝利哉に視線を送った。彼は涙を拭い、宇那手の両肩を掴むとすぐに指示を出した。
「この子を休ませないと! かなた、くいな!」
「はい! お館様!!」
双子の妹はすぐに姿を眩ました。輝利哉は、咎める様に宇那手を見詰めた。
「具合が悪いのなら、休んでいても良かったのですよ。貴女は体が弱いのですから」
「病気ではありませんし、原因ははっきりしていますので」
「義勇には、もう話したのですか?」
「⋯⋯いいえ。万が一悲しい思いをさせてしまっては⋯⋯」
「義勇」
輝利哉は、冨岡に視線を向けた。
「貴方の子供です。火憐は今、一番辛い時期です」
「⋯⋯は?」
冨岡は、固まってしまった。
(こ⋯⋯子供? 子供とおっしゃったのか? ⋯⋯俺の?)
「横になった方が良いんじゃねェか?」
兄妹が多かった分、不死川の方が慣れていた。彼は輝利哉に代わって宇那手の身体を預かると、その腕の細さに顔を顰めた。
「テメェ、ちゃんと飯、食ってんのか? ⋯⋯食えねェか」
「ごめんなさい。⋯⋯ご迷惑をお掛けしてしまって」
「どうして黙っていた?!」
冨岡は我に返り、詰め寄った。彼はまだ、動悸を抑えられずにいた。
「お前⋯⋯どうして、そんな大事な事を──」
「安定していないので⋯⋯。流れてしまって、ぬか喜びをさせてしまっては⋯⋯。そもそも喜んでいただけるかも分からず⋯⋯」
「馬鹿者! 知らされていれば、連れては来なかった!!」
冨岡は、不死川から宇那手を奪い取って顔を覗き込んだ。
「お前⋯⋯お前は⋯⋯何時だって大切な事を俺に話さない! 喜ばないわけがないだろう!」