第103章 繋がる
久々に、新たな産屋敷邸に、三人の柱が集まっていた。
不死川と冨岡は、以前の様に険悪な雰囲気ではなく、近況報告をし合っていた。
宇那手は、桜の木を見上げ、吐息を漏らした。此処にいるはずだった人々が、遥か遠い存在に思えた。
(生きたかったろうな⋯⋯。辛かっただろうな⋯⋯。寂しくて、戻れるものなら、戻りたいと、そう願っていただろうな⋯⋯)
「火憐、そろそろお館様がいらっしゃる」
冨岡の呼び声に、宇那手は笑顔で頷いた。
産屋敷輝利哉は、到底子供らしくない、堂々とした出立ちで現れた。
「来てくれてありがとう」
輝利哉は穏やかに微笑んだ。
「今日が最後の柱合会議だ。実弥、義勇、火憐。柱は三人だけになってしまったね。他の子供たちも、大勢いなくなってしまった。けれど、私たちは鬼を滅ぼすことが出来た。鬼殺隊は、今日で解散する」
「御意」
実弥と冨岡は同時に答え、宇那手は深く頭を下げた。本当に終わりなのだ。終わったのだ。
「長きにわたり、身命を賭して」
「世のため、人のために戦っていただき、尽くしていただいたこと」
かなたとくいなが言葉を続け、最後に輝利哉が引き取った。
「産屋敷家一族一同、心より感謝申し上げます」
頭を下げた彼らに、冨岡と実弥は狼狽した。
「頭を上げてくださいませ!」
「礼など必要ございません。鬼殺隊が鬼殺隊であれたのは、産屋敷家の尽力が第一!」
実弥の心からの叫びに続き、冨岡は、声を抑えて、語りかける様に続ける。
「輝利哉様が立派に務めを果たされたこと、お父上含め、産屋敷家ご先祖の皆様も、誇りに思っておられることでしょう」
その言葉を聞き、輝利哉はぶわっと涙を浮かべた。柱達が初めて見る、子供らしい表情だった。
「ありがとうございます⋯⋯っ」
輝利哉を労おうと、宇那手は手を伸ばし掛けたが、そのまま畳に腕が落ちてしまった。