第102章 帰還
「⋯⋯責められて当然です。俺⋯⋯禰󠄀豆子の事が大切で⋯⋯誰より家族を思っていたのに⋯⋯。義勇さんの家族を⋯⋯俺⋯⋯」
「冨岡さん、何を言ったんですか?」
宇那手は、炭治郎の両肩を支えながら、冨岡を振り返った。
「冨岡さん! 答えてください!!」
「⋯⋯お前が目覚めなければ、あの雪の日、禰󠄀豆子を助けた事を後悔すると言った。許せなかった。誰よりも鬼殺隊に貢献したお前が、隊士に殺されるなど!! 断じて認められなかった!!」
「⋯⋯ごめんね、竈門君」
宇那手は、全身を震わせて詫びた。冨岡の言葉は刀の様に鋭く、心からの怒りと憎しみが込められており、それを否定する術が浮かばなかったのだ。
「私が弱かったから、君に心労を掛けてしまったね⋯⋯。もう気にしなくて良いから。全部、私が悪かった」
「ちが⋯⋯違います! 違います!! 貴女は何も悪くないです!!」
「誰も、悪くなかったという事です。冨岡さんを許してください」
宇那手は、元継子をそっと抱きしめた。それから、傍にいた善逸、猪之助も両腕に抱き寄せ、子供か弟に接する様に背中を摩った。
「良く頑張ったね。君達の代は、誰一人欠ける事なく生き残った。素晴らしい事です。これからも、支え合って生きてね」
「ごめんなさい!! ⋯⋯ごめんなさい!! 俺、肝心な時に何時も役に立てなくて⋯⋯」
「もう良いから。三人共、泣くのはやめて。⋯⋯ごめんなさい。私も、少し疲れているの」
宇那手は、額に手を当てた。熱はない。
「火憐」
冨岡が彼女を支えて立ち上がらせた。
「ベッドに戻れ。⋯⋯辛いか?」
宇那手が、自ら不調を訴える事など、稀だ。余程具合が悪いのだろう。
「⋯⋯義勇さん。竈門君たちを部屋に戻して、謝ってください。私は、少し眠ります」
「分かった」
冨岡は素直に従った。
一人きりになると、宇那手は、涙を堪え切れなくなった。最近、一人になると自然と溢れてくる。
(ごめんなさい、竈門君。私、君を許せない)
全て、運が良かっただけだ。偶々禰󠄀豆子が駆け付け、偶々カナヲが薬を持っていた。そして、冨岡が素早く動いたお陰で、死者が出なかった。