第101章 ※鬼というもの
「生きて⋯⋯いて欲しかったな⋯⋯。煉獄さんと、もっとお話がしたかった。今の私なら、あの頃よりも沢山の言葉を知っていて、あの人に力を貸す事が出来た。伊黒さんや甘露寺さんと、美味しい物を沢山食べたかった。悲鳴嶼さんや玄弥君と、実弥さんを会わせてあげたい! しのぶさんを家に帰したかった! 無一郎君をうんと甘やかして、いっぱい抱きしめてあげたかった!」
彼女の中で、最も後悔が大きかったのは、意外にも煉獄との別れだった。
「座ろう」
冨岡は、ひとまず宇那手を席に座らせた。彼女は、言葉を惜しまず吐き出した。
「どうして私が泣いているんでしょう?! 泣きたかったのも、言葉にしたかったのも、私ではなく、殺されてしまった人たちのはずなのに! どうして、私なんかが⋯⋯。私⋯⋯私⋯⋯煉獄さんに、キチンとお礼も言わず、感謝も、別れの言葉も伝えなかった。ありがとうも、さようならも⋯⋯。なんで⋯⋯私はあんなにも、人の気持ちが理解出来なかったのでしょうか?」
「その問いに、俺は答えられない。俺にも分からない。⋯⋯俺は、自分が嫌われていることに気付く事しか出来なかった。伊黒と最期にまともに言葉を交わした時なんか、別れ際に死ね、ゴミカスと言われたぞ」
「それは、貴方のせいですね。最期の会話については、私にも責任がありますが」
宇那手は、微笑し、冨岡の目を見た。
「愈史郎さんの札を通して、悲鳴嶼さん、伊黒さん、実弥さんは、全てを知っていたんです。⋯⋯嘘を隠し通せない甘露寺さんと、無一郎君を除いて。貴方に関しては、危険なカケだった」
彼女は冨岡の頬に触れた。
「でも、私は信じました。貴方が、私を深く愛してくれていると。生きていると伝えなければ、使い物にならないポンコツだと」
「喜んで良いのか分からないな。⋯⋯伊黒はどの程度知っていたんだ?」
「私が鬼舞辻に、どの様に扱われているか、見ていました。敢えて見せたんです。伊黒さんには、他に愛する人がいるから、冷静になれると信じて。実弥さんは、怒りを力に変えられるだろう、と。⋯⋯悲鳴嶼さんには、お館様も全ての事情を打ち明けていましたから、私の持っている情報も全て共有すべきと考えました」