第101章 ※鬼というもの
「鋼鐵塚さんとアオイさんからです。早く戻らないと。また騒ぎが⋯⋯うわぁ?!」
突然後ろに引っ張られ、宇那手は悲鳴を上げた。そのまま尻餅をつきそうになったが、冨岡がしっかりと支えていた。
「そんな格好で窓辺に立つな。見られるだろう。もう、俺だけの物だ。気を使え」
「はい⋯⋯。⋯⋯⋯⋯あの、離していただけますか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯すまない」
冨岡は腕に力を込めた。
「お前を見ていたら⋯⋯⋯⋯その⋯⋯⋯⋯」
「駄目です」
宇那手はきっぱり言い放った。
「もし、子供が出来ていたら、流れてしまうかもしれないんですよ! だから我慢してください」
彼女は手を伸ばして、冨岡のいちもつを擦り上げた。
「⋯⋯遊びなら、構いませんから。こんな状態では苦しいでしょう? 私は怒りませんから」
「うっ⋯⋯嫌⋯⋯だ⋯⋯。お前以外なら⋯⋯萎えて終わりだ。⋯⋯っ⋯⋯すまない!」
冨岡は、宇那手の腹を盛大に汚してしまった。その様を見て、尚欲情し、彼は自分自身に腹を立てた。宇那手は、呆れつつも、声を上げて笑い、冨岡が満足するまで付き合った。
夕方。
「本当に、すまなかった」
疲れ果てた様子で、冨岡は呟いた。
「こんなに自制心の無い人間だとは、思わなかった。恥ずかしい」
「私の方こそ、ちゃんと相手が出来なくてごめんなさい」
宇那手は列車に乗り込み、空いている席を探した。奇しくも、無限列車だ。もう、遠い昔の出来事に思えたが、煉獄が亡くなってから一年も経っていない。
(あの人は凄い人だった。乗客全員を守り通した。もし⋯⋯もし生きていれば⋯⋯しのぶさんも、伊黒さんも、甘露寺さんも、悲鳴嶼さんも、時透君も、生きて──)
「火憐」
冨岡は、宇那手の肩に手を置いた。宇那手は、我慢をやめ、振り返って涙を零した。