第101章 ※鬼というもの
「わーー!!!」
目を覚ますなり、宇那手は悲鳴を上げた。もう日が高く昇っている。昼過ぎだ。
「義勇さん!!」
「起きたか」
「起きたか、じゃありません!! どうして起こしてくれなかったんですか!!」
「特に用事も無いだろう。お前が安心し切った顔で眠っていたから、起こせなかった」
冨岡は宇那手の身体を引き寄せた。
「大丈夫か? 痛くはないか?」
「はい。⋯⋯え」
宇那手は、まだ下半身が繋がったままの事に気が付いて頬を赤らめた。
「ど⋯⋯ど⋯⋯どうして?! なんでこんな体勢で?!」
「お前はそのまま寝てしまったし、案外このままでも具合が良かったからな」
冨岡は微かに笑うと、意地悪く宇那手の耳に口を寄せた。
「一晩蓋をしてやったんだ。男と女⋯⋯どちらが良い?」
「⋯⋯この時代に女の子が生まれたとして、幸せになれるでしょうか? 小さな女の子が一人で⋯⋯」
「俺はどっちでも良い」
冨岡は、ゆっくりと身体を起こした。そして、宇那手の頭を撫でてやった。
「お前の血を引く子供なら、どちらでも愛おしくて堪らないだろう。きっと燃える様な心を持った子だ。そんなに心配するな」
「⋯⋯ありがとうございます。私がねだったのに、ごめんなさい」
「お前が何かを強くねだったのは、初めてだった。心の底から欲しかったのだろう? ⋯⋯湯を浴びて、ゆっくり帰ろう」
「はい」
宇那手は返事をして、身体を起こした。そして、窓辺に鴉がとまっている事に気が付いた。
「任務でしょうか?」
彼女は全裸で窓辺に近付き、手紙を受け取った。ミミズが這ったような汚い字が書かれている。
──お前の刀をさっさと見せろ。折れなかったのだろう?! 残ったんだろう?! 鬼舞辻無惨を討った俺の刀を早く見せろ!!!
そして、隣に、冨岡の鴉がとまっていた。そちらも手紙を携えている。
──お願いします、火憐さん。早く戻って来てください! 鋼鐵塚さんが暴れて、手が付けられないんです!! 炭治郎さんの刀も折れてしまって、無事だったのは、火憐さんの刀だけだったんです!!