第99章 最終任務
「ある意味犠牲者です。⋯⋯平安時代、虚弱体質に生まれた彼に、とある医者が、青い彼岸花を煎じた薬を飲ませました。その結果、体質が変わり、強靭な体を手に入れること成功しました。しかし、人を喰わねば生きて行けず、日光を浴びれば死んでしまう。鬼舞辻は、二つの目的を持って、率先して鬼を増やしていました。一つ、自分の手下を増やして青い彼岸花を探す事。二つ、日光を克服した鬼を生み出し、その個体を喰うことで、完璧な存在になること。鬼舞辻を殺さなければ、鬼は増え続ける。殺すしか無かったんです」
宇那手は、託されていた書庫の鍵を取り出した。
「きっと、あの部屋の中に、私の発言を裏付ける何かがあるはずです。一緒に来ていただけますか?」
「その前にお聞きしたい事があります」
麗の瞳は、憎しみに揺れていた。
「この方は、誰ですか? 貴女にとって、どの様な方なのですか?」
彼女は冨岡を見詰めた。宇那手は、麗の気を逸らすことは不可能だと察して、予め用意していた薬を机に置いた。
「彼は、私の夫であり、鬼殺隊の柱。鬼舞辻無惨を共に討った仲間です。今日は、貴女に機会を与えてる為に連れて来ました。この薬⋯⋯毒は、鬼舞辻が多くの隊士に打ち込み、苦しめた物です。⋯⋯カナヲ。あの人たちを連れて来てきて」
カナヲは一つ頷くと、屋敷の外へ飛び出し、すぐに重傷を負った隊士達を連れて来た。麗は息を呑んだ。
宇那手は、淡々と言葉を紡ぐ。
「多くの隊士が即死した中、運良く生き残った者たちです。⋯⋯この二人は、柱を庇って左腕と眼球を失いました。この方は、捕食されそうになった所を、仲間に両腕を切り取られ逃れました。この方は、腕で鳩尾を貫かれ、毒が周り、左半身の感覚を失っています。私が用意した薬は、限りなく、鬼舞辻が用いた物に近いはず。貴女の気が収まらない様でしたら、これを、今、この場で私の夫に飲ませます」
「それは、どういう──」
「納得が行かないでしょう。ご自身の夫が殺され、私はのうのうと生きている」
「火憐様!! それは──」
「黙りなさい」
「黙りません!! その”願い”は聞き入れられません!!」
両腕を失い、羽織で隠していた隊士が怒鳴った。