第99章 最終任務
「聞かせてください。力になりたいです」
隊士の返事に、宇那手は頷き、椅子に掛けた。
「鬼舞辻無惨が、人間として暮らしていた時の、妻子が生きています。奥様は鬼舞辻が鬼であると分かっても、暫くの間は心から愛していらっしゃった。私が奴に血を吸われ、酷く傷付けられた時、嫌悪と憎悪が、愛情に勝った様ですが、それでも、夫を私が殺したと知れば、私を激しく憎むかもしれない。その罰は甘んじて受けるとして、あの人には真実を伝えたい。鬼舞辻がどれほど多くの人間を不幸に陥れ、憎まれて来た存在であるかという事を。⋯⋯ですが、あの方は現実を直視出来ないかも知れません。私達も、鬼が存在する事を、もう証明する事が出来ない。多くの、傷付いた者たちの証言が無ければ」
「⋯⋯どうしたら⋯⋯良いんですか?」
「私の後ろに立っているだけで構いません」
「罰って何?!」
カナヲが身を乗り出した。宇那手は目を細め、懐から薬を取り出し、説明をした。
それを聞いたカナヲも隊士も、激しく反発したが、結局は宇那手と冨岡の覚悟に折れて、協力を約束した。
宇那手が、傷付いた隊士を伴って、浅草へ向かったのは、それから一週間後だった。
「此処で待っていてください」
宇那手は、冨岡とカナヲ以外の隊士たちを庭に待機させ、玄関の呼び鈴を鳴らした。
すぐに、麗が姿を見せた。彼女はどんな表情を浮かべれば良いのか分からない様子で、俯いていた。
「⋯⋯娘には⋯⋯まだ、話していないんです。ただ、あの人が、事故で亡くなった、と」
「その方が良いかと思います。麗さん。私は、鬼舞辻無惨を殺しました。全ての鬼の始祖を殺しました。話を⋯⋯聞いていただけますか?」
「上がってください」
麗は客間に宇那手と冨岡、カナヲを上げると、お茶も出さずにソファーに掛け、身を乗り出した。
「鬼の始祖とは?! 彼の方は、鬼にされた、犠牲者の一人では無かったのですか?!」