第99章 最終任務
彼女は、まだ顔を合わせた事の無い隊士たちが休んでいる病室の扉を開けた。
「こんにちは。意識がはっきりした様ですね」
「水炎柱様!!」
「そのままで」
宇那手は、立ち上がろうとした二人を制した。一人は左腕を失い、もう一人は顔の半分が包帯で覆われていた。
「私の薬は、キチンと効いていますか? 痛みがある様でしたら、処方を変えますが」
「いいえ! 問題ありません!! 顔も⋯⋯」
男はゆっくりと包帯を取った。眼球が無くなり、爛れていたが、腫れは引いていた。
「此処まで、戻るとは思っていませんでした」
「皮膚の炎症はやがて治ります。義眼を嵌めれば、顔の形も元の状態に戻りますよ。⋯⋯ただ、今の技術では、無くなった目や腕を元に戻す事は出来ません。⋯⋯私達がもう少し強ければ、守り通せたのですが⋯⋯」
「いいえ!」
腕の無い男は首を横に振った。彼は、甘露寺を庇って腕を失っていた。彼が庇った柱は、命を以って償っている。誰も責める事は出来なかった。
「少なくとも、貴女を恨む筋合いは御座いません! 貴女は先走った我々を完全に守り通してくださった!! 貴女の薬が無ければ⋯⋯いえ⋯⋯貴女が携帯を命じた方位磁針と鏡が無ければ、あの空間の中で死んでいました」
「ありがとう。⋯⋯今日はね、鬼殺隊最後の任務について、話をしに来たの。貴方達の助けが必要なのよ。私は、自分で広げてしまった風呂敷を、きちんと畳まなくてはいけない。話だけでも聞いてくれる? これは命令じゃ無い。鬼舞辻を殺した時点で、貴方達は、もう隊士では無いのだから。私が個人的に、貴方達に仕事を頼みたいの。勿論俸給は支払います」