第98章 継ぐ子の役割
「安心した。お前が不死川を袖にして。お前が必要なんだ、火憐。泥の中でも、雪山の中でも、寄り添い、眠ってくれる継子がいなければ、俺も迷ってしまう。俺が言うのは、間違っているかも知れない。だが言わせて欲しい。お前は立派だ。継子の役割を果たした。俺の継子が柱になった事は、俺にとって、何よりの誇りだった。自由に生きろ。何があっても支える」
「⋯⋯義勇さん」
宇那手は、冨岡の胸に顔を埋めて泣いた。
(私は何を恐れていたの⋯⋯? 親でも、兄弟でも無い、血の繋がりの無いこの人が、此処まで私を大切に思ってくれているのに。私は⋯⋯)
「義勇さん。ずっと、お傍に置いてください。貴方の為なら、どんな自分にでも成れますし、どんな自分でも愛せると思います。これから、貴方の事をもっと好きになって、そして⋯⋯」
安堵と疲れからか、宇那手は、穏やかな表情で眠りに落ちた。冨岡は、彼女が眠っても傍を離れず、寧ろ一層身体を抱き寄せた。何時か訪れる死が、こんな風に穏やかな物である様にと、心から願った。