第98章 継ぐ子の役割
「飲んでも効きません!!」
宇那手は、ボロボロ涙を零し、冨岡の手に縋った。
「ずっと、痛み止めを服用していました!! 毒の副作用を抑えるために!! 腕を切り落とした時には、この世界に存在する、最も強い鎮静剤を打ちました!!! 効かないんです!!! ごめんなさい!!! 一人にしてください!!! こんな惨めな姿、貴方に見られたく無い!!!」
そう言いつつ、彼女は冨岡の手を離そうとしなかった。
「俺は⋯⋯」
冨岡は、宇那手の首の後ろに腕を入れて抱き起こした。
「俺は見ていたい。お前は、家族を失った晩、こうあるべきだったんだ。泣くことも、喚くことも、我が儘を言うことも無かったのは、俺が原因だろう。柱として戦う、俺を見てしまったからだろう。気が済むまで泣き続けろ。ずっとこうしているから」
「泣きたく⋯⋯ない⋯⋯!!」
「泣かなければならない。俺は泣いた。姉が殺された時も、錆兎が死んだと聞かされた時も。夜毎魘されて泣いた」
「⋯⋯私⋯⋯嫌⋯⋯。泣き止みたい⋯⋯です!! 貴方に相応しい⋯⋯人間に──」
「強情な奴だな」
冨岡は、とうとう宇那手の手を振り解き、ベッドへ押し倒すと、額に唇を落とした。宇那手は、心底驚いた様子で、目を見開いた。
「あ⋯⋯え⋯⋯? なんで⋯⋯」
「俺はお前の身体がどうなっていようが、知った事では無い。泣こうが喚こうが、触れていたいと思う様な、淺ましい人間だ。もう、怪我は治ったのだろう? 屋敷へ戻ったら、すぐに共寝をするぞ。分かったか? こういう人間だ。お前に相応しいだろう」
反論を聞く前に、彼は宇那手の首に咬み傷を付けた。執拗に、何度も、何度も。
「やっ!! やめて!! 義勇さん!!」
「止めない」
しまいには、彼女の寝巻きの上衣のボタンを外し出した。
「駄目です、義勇さん!!!」
「うるさい。上なら問題ないだろう!!」
「嫌⋯⋯」
宇那手は、止めることも出来ずに、次々と涙を零した。涙と共に、胸につかえていた苦しみが流れ出て行く様な気がした。そして、ずっと聞けなかった事が口をついた。
「どうして?! どうして貴方は、私を愛してくださるのですか?! 私は目的の為に、自分の身体を利用した、卑しい人間です!!」