第98章 継ぐ子の役割
「あ⋯⋯あの⋯⋯」
禰󠄀豆子がもじもじと身体を動かした。
「隠していたわけじゃないんですが⋯⋯ぎ⋯⋯冨岡さんが、羽織を直したお礼にって、着物や宝石を沢山贈ってくださって⋯⋯」
「あの盆暗!! ⋯⋯いえ、ごめんなさい。羽織は⋯⋯あの人が命よりも大事にしていたから⋯⋯。でも、それにしたって金銭感覚が!! 早死にするって言ったって、何時迄生きられるか分からないのに、湯水の様にお金を使っては⋯⋯」
「ぷっ」
禰󠄀豆子は、おかしくて笑ってしまった。宇那手と冨岡の絆は強固な物で、嫉妬すらされなかった。安心した。
「大丈夫ですよ! 他の隊士もびっくりするくらいのお金を貰っていましたし、柱の方はもっと沢山受け取っているはず! ⋯⋯火憐さんは、まだ貰っていないんですか?」
「私の給金は⋯⋯義勇さんに渡す様にお願いしているんです。多分、私は使わないから」
「は?!」
「ええ?!」
アオイと禰󠄀豆子は同時に引いた。つまり、冨岡が禰󠄀豆子に渡した物は、宇那手との共有財産と言える。
「ご⋯⋯ご⋯⋯ごめんなさい!! 知らなかったから⋯⋯ど⋯⋯どうしよう!」
「気にしないでください。義勇さんにとって、それだけ価値があったと言う事でしょう」
宇那手は禰󠄀豆子を落ち着かせ、羽織に鋏を入れ出した。
(にしても、程度って物があるでしょうが!! 贈られた側が気後する程渡すなんて!! 私⋯⋯あの人と生きて行けるの?)
「⋯⋯義勇さん、質実剣豪な性格だと思っていたんですが⋯⋯結構思い切りが良い様で心配です」
「火憐さんは、もう少し我儘を仰っても良いと思います!」
アオイは鼻を鳴らした。
「何か欲しい物⋯⋯必要な物は無いんですか?!」
「今は特に。これから、どうするかもまだ決めていないので」