第97章 答え合わせ
「⋯⋯いいえ。⋯⋯でも、あの⋯⋯珠世さんが⋯⋯」
宇那手は、顔を伏せた。
「地獄にいました。他の元鬼たちと一緒に、鬼舞辻を引っ張って行った⋯⋯。あの人はすぐにでも明るい方へ行けたのに⋯⋯自ら地獄に留まると⋯⋯」
「⋯⋯人を喰っているんだから、仕方が無い。あのお方も、俺も、それは承知の上だった。俺は待つよ。珠世様が戻って来られるまで、何百年でも。これ、ありがとうな」
愈史郎は、簪を取り出した。
「お陰で、待てるよ。何百年でも。生きるよ」
「⋯⋯良かった」
宇那手は、ゆっくりと粥を口に運びながら、色々な事を考えた。何から話すべきか。何を話すべきか。
「槇寿郎さん。羽織を汚してしまってごめんなさい。ですが、この模様は、必ず後世に伝えます」
「そんな事は、もう良いんだ。君が生きていてくれて良かった」
「冨岡さん⋯⋯貴方の羽織も⋯⋯傷んでいたのに⋯⋯」
「禰󠄀豆子が繕ってくれた」
「私が⋯⋯やりたかった」
宇那手の言葉に、冨岡は堪らなく愛おしい想いが湧き上がり、微笑んだ。
「今は、全て俺にやらせてくれ。ともかく、今日はもう、寝た方が良い」
「一ヶ月は絶対安静だ。じっとしていろよ」
愈史郎はそう告げると、片手を差し出してお椀を受け取った。それから、彼は冨岡に目を向けた。
「不死川の事、お前が何とかしろ。火憐は優しいから、最悪あっちに引き摺られるぞ。お前はみてくれもまあまあだし、嫁の来てがありそうだからな」
「嫌だ!」
宇那手は、冨岡の袖を掴んでいた。
「嫌だ⋯⋯義勇さん。我儘を言ってごめんなさい! でも⋯⋯」
鬼舞辻を倒した宇那手は、まるで子供の様になってしまった。
「私が⋯⋯不完全なのは分かっています。傷だらけで、鬼とまぐわった⋯⋯最低の人間だけど⋯⋯貴方が他所へ行くのは嫌! 絶対嫌!! お願いですから、私を傍に──」