第97章 答え合わせ
「おい、待て!」
宇髄の制止を無視して、彼は出て行ってしまった。
「あーあー。あれは完全に拗らしてんな。簡単に譲る気も無さそうだし⋯⋯」
「⋯⋯私、酷いことを⋯⋯」
宇那手は、眉尻を下げた。不死川が自分を好いてくれている事は分かっていた。だが、同じ意味での好意を、彼に向ける事は出来ない。
悩む彼女を、宇髄はわしわしと撫でた。
「お前、ちゃんと人の気持ちが分かる様になったじゃねぇか。最初の柱合会議じゃ、冨岡の傷を抉りまくってたからな。そういう性格も嫌いじゃなかったが、今の方がずっと良い」
「お前ら、少しは病人を気遣え。精神的に疲弊させてどうする」
愈史郎は文句を言い、冨岡に目を向けた。
「先に水を飲ませてやれ。それから、食事。俺は伝達事項を話すから、なんとなく聞いておけ」
冨岡は、湯呑みを宇那手に手渡した。彼女はそれを飲み干し、自らお椀に手を伸ばした。
「自分で食べられます」
「そうか」
冨岡は、残念そうな顔をした。宇那手は、今にも眠ってしまいそうだったが、執念で食事を始めた。愈史郎が口を開く。
「まず、お前が気にしていそうな事。浅草で鬼にされた男だが、あの後人間に戻した。後遺症は無い。鬼になっていた期間も短かったしな。それから、炭治郎はまだ意識が戻らない。妹の方は完全に回復した。⋯⋯麗については、お前から話を聞きたいと言っている。落ち着いた様子だった。鬼舞辻を殺す事、話していたのか?」
「はい。麗さんは、鬼舞辻が鬼だと知ってからも、しばらくの間は、本当に彼を愛していました。ですが、私の血を飲む姿を何度か見て、心が離れて行った事に気が付いたので、ヤツが鬼の始祖であり、大勢の人間を喰っており、殺すべき相手だと伝えました。あの人は、娘さんを守るために、私に協力してくださった」
「そうか。次、浅井の件。暫く貧血で動けなかったが、今は回復して、墓参りに行っている。桜里もだ。藤原たちは、蝶屋敷に残ると言っている。みんな、お前が静かに暮らせる事を願っている。以上だ。何か質問は?」