第97章 答え合わせ
「俺も、産屋敷と同じ考えだ。お前は、誰よりも、与える事の出来る人間だ。⋯⋯珠世様が泣いた所を、二回だけ目にした事がある。一度は、禰󠄀豆子が俺たちを人間だと認識した時。それから、お前が、鬼である珠世様の誕生日を祝い、紅茶を送って来た時だ。お前の言葉に、どれだけ救われたか分からない。だから、お前だけは必ず助ける!! 子の成長を見守りたければ、鬼になれば良い! 毎年、老化の薬を飲んで、人間として死ぬことも出来る!! その男に、同じ処置をしても良い!! だから⋯⋯後ろめたいなんて思うな!! お前がくれた言葉を返す。生き残ってくれて、ありがとう」
愈史郎はかなり早口に言い、耳を赤く染めた。
「⋯⋯あ」
宇那手は体温計を確認して、思わず口元を緩めてしまった。三十六度。平熱だ。
逆に言えば、全集中常中を解いてしまう程、身体が弱っていたのだ。
「どう⋯⋯思いますか?」
彼女は愈史郎に意見を求めた。彼は宇那手の顔色を観察し、一息吐いた。
「正常だ。忘れてたが、お前、怪我は? 腕と首と肩の他に、怪我はしていないか? 鬼になった事を考慮して、解毒の治療をしていなかったんだが⋯⋯」
「いいえ。肺を酷使した意外は、特に。擦過傷はありますが⋯⋯」
「嘘だろ?! テメェ上弦ノ壱にあれだけ近付いて⋯⋯」
不死川は額を押さえた。
「いや⋯⋯鬼舞辻にあれだけ近付いて⋯⋯。胡蝶の継子と冨岡を庇ってなけりゃ⋯⋯ほぼ無傷だったって事かァ?!」
「⋯⋯そういう事になりますね」
宇那手も、驚いた。他の柱は殉職するか、大怪我を負ったというのに。
「俺は二度もお前に庇われた。情けない」
冨岡は、宇那手の手を握って詫びた。不死川も、包帯で巻かれた手を差し出した。
「お前が庇ってくれなけりゃァ、指が完全に捥げてた。何とか繋いで貰ったが、本当に危なかった。⋯⋯傷だらけの上に、指のない男なんて──」
「玄弥君の言葉を忘れたの?」
宇那手は、打ちひしがれた不死川の頭に手を伸ばした。
「貴方は、世界で一番優しい人だ⋯⋯って。誰だって、貴方と話せば好きになる。私も貴方の事が──」
「やめろォ!」
不死川は、宇那手の手を振り払って立ち上がった。